ジョーシス株式会社が135億円調達: 未来の海外展開と潜在的課題
ジョーシス株式会社(https://jp.josys.com/home/)が、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズなど18社を引受先とする第三者割当増資で総額135億円を調達したことが発表されました。本記事では、同社のビジネスモデルや今後の海外展開の可能性、そしてそれに伴う課題について考察します。
サービス概要
ジョーシスは、シャドーITの監視を可能にするSaaSサービスや、情報システム部のアウトソーシング(キッティング等)を提供しています。導入事例としては、ホンダ、野村不動産、阪神阪急マーケティングソリューションズ、静岡銀行SMSなど、大手企業からスタートアップに至るまで多岐にわたります。ただし、これらはあくまで公表されている事例であり、中堅スタートアップが主な顧客層である可能性が高いです。
海外展開の計画
ジョーシスは集めた資金を活用して、9月6日より北米やAPAC地域での事業展開を計画しています。特にAPAC地域に関しては、シンガポールとマレーシアが主なターゲットであると推測されます。
潜在的課題
海外展開は挑戦的な一歩であり、今のステージで海外に勝負する心意気を他の大企業には見習ってほしいです。しかし、現実的にはいくつかの課題が考えられます。
- 親会社Raksulの営業力が使えない
ジョーシスがこれまで依存していたRaksulの営業力は、海外では活かせない可能性があります。 - シャドーITに対する感度が低い
APAC、特にスタートアップでは、売上に直接貢献しないシャドーITに対する関心が低い可能性があります。 - 連携するSaaSやデバイスの多様性
各国にはローカルSaaSが存在し、普及するモバイル端末も異なります。これらに対応する必要があります。中華系のモバイルOSは一部ブラックボックスでもあり、特殊な対応が生まれることがあります。 - クロスセル商材の不足
Raksul商材が存在しない、端末系の対応(キッティングや保管・廃棄)ができない場合、新たなビジネスチャンスが限られるかもしれません。 - 個人情報保護法への対応
シンガポールやマレーシアでは、PDPAに基づく国外データ転送の制約があるため、法的課題が増大します。
進出の可能性と課題
海外進出にはいくつかのシナリオが考えられます。日本の大手企業の海外拠点をサポートする可能性、現地の大手企業との提携、完全なオンライン販売などです。それぞれのシナリオには、独自の課題と機会が存在します。
シナリオ1:海外に進出する日本企業を支援するため
可能性:ジョーシス社がこれから目指すとされる日本の大手企業は、多くが海外拠点を持っています。これらの企業が直面するシャドーITの問題は、日本国内だけでなく、海外拠点でも発生する可能性が高いです。このため、ジョーシス社が日本の大手企業と取引する際に、海外拠点もカバーすることで、更にビジネスのスケールを拡大するチャンスがあります。
課題:海外に進出している日本の大手企業は既に独自の情報システムを整えているケースが多く、新たなソリューションを導入する障壁が存在する可能性があります。また、この規模になると100%子会社だけでなく、現地法人とのジョイントベンチャーなど資本関係も多様になります。日本の大企業をこれから攻略する段階であることを考えると、このシナリオは筋が悪いかもしれません。
シナリオ2:ローカル大手企業からの受注を獲得するため
可能性:APAC地域には金融中心地が多く、大手企業が存在します。これらの企業は資本力があり、新たなITソリューションに対する需要も高い可能性があります。シャドーITに対する認識も高まってきているため、市場ニーズは確かに存在するでしょう。
課題:現地の大手企業に対する営業は、日本での営業よりも困難な場合が多いです。これは言語、文化、法的要件など多くの面で課題が存在するからです。特に個人情報保護法に関する課題は、信頼を築く上で非常に重要な要素となります。Raksulの営業力が使えない状況を考えると、大手現地パートナーとの提携を考えていると思われます。非常に難しいシナリオですが、おそらくこれが有力かと思います。
シナリオ3:完全オンラインで販売する
可能性:オンライン広告を活用して低リスクで市場調査が可能です。失敗した場合の損失を最小限に抑えつつ、市場のニーズと自社サービスの適合性を確認することができます。
課題:オンラインでの販売だけでは、対面での商談やデモが難しいため、ジョーシスの様な製品の認知度向上や顧客信頼の獲得が一段と困難です。また、135億円という大きな調達をした以上、より大規模な事業展開が期待されるため、オンラインのみの販売に頼る戦略は短期的であるとも言えます。
ありうるケースと対策
最もとってほしくないシナリオが、上記の中間解です。いわゆる”あるある”進出でして、以下のケースです。
- ローカル大手企業を狙いに参入(シナリオ2)
- リード不足、低い有料受注率(無償トライアルの増加)、代理店網構築時間、なかなか売上が伸びない
- 売上を確保するために現地日系企業も狙う(シナリオ1と2)
- 売上が伸び始める
- 4の売上の伸びを見据えた事業計画が設定される
- さらに日系企業に集中する
総括
ジョーシス株式会社の今後の展開は多くのポテンシャルを秘めていますが、海外展開には数々の課題がついてくることは避けられません。どのような戦略でこれを乗り越えるのか、今後の動向が注目されます。
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